イギリスの中央政府直轄地であるイングランドでは、都市計画の主体は基礎自治体とされていますが、自治体が定める都市計画の上位に、地方Region単位で、「地域空間戦略」RSS:Regional Spatial Strategiesと呼ばれる、広域的な都市・地域整備指針の策定が義務付けられています。
リージョンは、わが国の地方ブロック(近畿、中国、四国など)と同じような拡がりを持つものであり、首都圏である大ロンドンGreater Londonもリージョンのひとつとされています。
このリージョンは、大ロンドン庁GLAが設置されているロンドン以外には、地方自治体的な組織は設けられていませんが、国の出先機関であるGovernment OfficesやRegional Development Authoritiesが置かれている他、地方自治体の代表者により構成されRSSの策定など広域計画の策定・調整等の機能に特化した地域議会Regional Assembliesが設置されています。
この地域議会がリージョンの広域計画の策定にあたるという仕組みは、わが国の広域地方計画の策定に広域地方計画協議会があたるという仕組みに通じる所があります。
また、RSSでは、たとえば中心市街地Town Centreの広域的な配置を定めることとされており、RSSで指定されたタウンセンター以外の地域では大規模な商業施設の立地は規制されます。
これは、今般のまちづくり三法の改正と連動して動きが顕在化している、大規模商業施設の立地を誘導する中心市街地等を都市計画区域マスタープラン等により広域的に設定しようとする仕組みに通じるものです。
このように、イギリス(イングランド)の都市・地域計画の仕組みは、わが国の国土計画や都市計画の仕組み、その運用の参考事例になるものと考え、本レポートを作成しました。
本レポートでは、イギリスの都市・地域計画システムの背景にある地方制度の解説からはじめ、計画システムの概要、実際の計画事例も紹介しました。
また、計画システムの背景となっている、国が策定した計画指針Planning Policy Statementの内、RSSの策定指針PPS11、及び中心市街地計画指針PPS6の抄訳も添付しました。
付記1
Regionは、本レポートの主題から言えば「地方」(広域的な地方ブロック)と訳すべきですが、「地方自治体」という言葉を用いる場合の「国と対置するものとしての地方」という意味合いと紛らわしいことから、本レポートでは「リージョン」というカタカナ言葉に訳語を統一しました。
付記2
本レポートの参考1、2に抄訳を添付しているPPS11、PPS6は、全文訳も弊社で作成しています。この全文訳を読みたいという方がいらっしゃれば、プライベートユースに限るという条件で提供は可能ですので、弊社あてにお申し出ください。
付記3
PPSの原文書を含め、イギリスの都市・地域政策に関する情報は、イギリス政府のDepartment of Communities and Local Governmentのホームページをご覧ください。本レポートの作成にあたっての情報の多くは、このホームページに掲載、ないしリンクされている情報によっています。
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